【序論】ダブルズームキットを買うのは本当に「やめておけ」なのか?
SNSやネット記事で、「ダブルズームキットは暗い」「すぐに上位レンズが欲しくなる」というネガティブな意見が飛び交っている。あなたは今、「買いたいけれど、後悔したくない」という不安で検索窓を閉じられない状態かもしれない。
しかしこれはあなたがカメラメーカーのメッセージを鵜呑みにしない賢明な消費者である証拠。高い買い物をする前にデメリットを徹底的に調べるのは正しい行動といえる。
記事はそもそもダブルズームキットとはなにかから始まり、最後には「個人的な経験」も付け加えることにした。興味のある方は後半も是非御覧いただきたい。
目次
ダブルズームキットは、たしかに「究極の製品」ではない。プロの意見に照らせば、いくつかの欠点があるのも事実。
しかし、「最初の一歩」としては、これ以上の選択肢はない。なぜなら、巷で言われる後悔の多くは、製品そのものではなく、過剰な期待と知識不足が原因だからだ。
本記事では、「やめておけ」と言われる具体的な理由を掘り下げ、そのすべての後悔を回避し、心から満足できる方法を徹底解説する。デメリットを知った上で購入すれば、あなたは必ず最高のカメラライフをスタートできるだろう。
ここではCanonのEOS系のカメラを中心に考察するが、考え方自体はどのカメラメーカーでも応用できるのではないかと思う。
そもそもダブルズームキットとは?
ダブルズームキットとは、カメラ本体に広角から標準域をカバーする「標準ズームレンズ」と、遠くの被写体を大きく写せる「望遠ズームレンズ」の2本がセットになった商品。初心者であってもレンズ交換式カメラのメリットを享受してほしいとメーカーが準備しているカメラセットだ。一つのセットで様々な写真が撮影できるメリットがあるのだが、標準レンズが中級者・上級者には物足りないという意見と望遠ズームレンズがあまり活躍しなかったという意見がある。
【脱オタク】クリエイティブ思考が強い「伸びしろがある人」が選ぶCANONのカメラ2種類
カメラを探し始めたとき、最初に迷うのは「プロのアドバイス」だ。プロにはプロなりの視点があり「初心者向けのカメラはつまらない」と感じてしまうだろう。だから先回りして「やめておけ」と言ってしまうのではないかと思う。
しかし、中には「プロになるつもりはないが自分だけの表現を突き詰めてみたい」とか「クリエイターにちょっと興味がある」というくらいの人もいるはずだ。
CANONはそんな人に「シンプルだけど心地よい」というカメラEOS R100と「想像以上が、始まる」というEOS R10を準備している。どちらもクリエイター未満だが一般消費者以上という「伸びしろの多い人」を対象にした商品である。
- EOS R10:「クリエイティブ思考が非常に強く、特に動体や動画も撮りたい、ガチ勢寄りな伸びしろがある人」向けのカメラ
- EOS R100:「写真表現を始めたいが、カメラの重さや複雑な設定で挫折したくない、軽快さ優先の伸びしろがある人」向けのカメラ
ポイントは「伸びしろ」の種類
ここでポイントになるのは伸びしろの種類である。
とりあえずカメラを外に持ち出して場数を踏みたい人が最低限揃えるべきキットはEOS R100だ。確かにあとになって「長距離望遠レンズは使わなかった」となるかもしれないが、持っていないから野鳥が撮影できないとモヤモヤするくらいなら一度使ってみるほうがいいのではないか。価格もEOS-R10に比べると抑えめだ。
一方で将来もっとステップアップしたいと考えるなら最初からEOS R10を買っておくといいかもしれない。プロフェッショナルな機材と操作方法が似ているので以降も楽にレンズ資産を継承できる。
つまり伸びしろの方向性がちょっと違うのである。
EOS-R10
価格は2025年12月15日現在のもの。
EOS-R100
価格は2025年12月15日現在のもの。
レンズ互換性豆知識
キヤノンは一眼レフからミラーレスへ移行する際、レンズの接続規格(マウント)をRF/RF-Sマウントに変更した。この変更は、リアルタイム補正の強化、手ぶれ補正能力の向上、レンズからのカスタマイズ対応など将来を見据えた表現者にとって最高の設計だった。EFマウントはフィルムカメラ時代に作られた規格だったためデジタルカメラの性能向上に合わせた改良が難しかったのである。ただし「レンズ資産継承」も重要なためCANONはマウントアダプターを円滑な移行を行った。
- 新しいレンズの安心感: EOS R10やR100でダブルズームキットとして購入したRFレンズは、将来、プロフェッショナルなフルサイズ機(EOS Rシリーズ)へステップアップしても、アダプターなしでそのまま使用可能。レンズ資産が無駄にならない。
- 古いレンズの活用: 以前の一眼レフ(Kissシリーズなど)で使っていたEFレンズも、「マウントアダプター」を使えば、R10やR100で使用できる。
「卒業」は後悔ではない
プロやカメラオタクが言う「望遠レンズはあまり使わない」とか「標準レンズは暗すぎる」は確かに正しい。しかしながら、これは使ったことがあるからこその言葉なのだ。例えば後ろボケ(いわゆるシネマティックな写真)を撮影したいと思ったということは、そこで次の欲が出てきたということ。その時に新しいステップアップを志すのは卒業であって後悔ではない。
個人的には「標準レンズ」から始めて「明るい単焦点レンズ」と「望遠レンズ」を買った
では個人的には最初からダブルレンズキットを買ったのか? 最初に買ったのは標準レンズだった。カメラはCanon EOS X4である。ギリギリ動画が撮れるが今のスタンダードから見れば実用的とは言えない動画性能である。だがこれでも結構遊べる。つまり端的に言って「カメラは楽しい」のだ。中古で揃えたのでセットでだいたい2.5万円だった。

そもそも最初は「何が標準」かわからないだろう。大抵なんでも使えるズームレンズということで18-55mmというレンズが売られている。こういうレンズは50mmレンズが標準とされるのだが、CANONのAPS-Cはレンズの数字を1.6倍するので28mm-88mmをカバーするレンズという意味になる。だが、そもそも最初はAPS-Cとか50mmなどと言われてもなんのことだかわからないはずである。実際に撮影してみてやっと意味がわかるのだ。
なぜ明るい単焦点レンズが欲しくなったのか?
ではなぜ明るい単焦点レンズが欲しくなったのか。カメラを始めるとやがて「後ろボケ探求期」に入る。いわゆる映画のように後ろがボケた写真がものすごく芸術的に見えるのである。こうなったら標準レンズからの卒業時期になる。この時期に差し掛かった人が「標準レンズはつまらない」と感じるのである。

CANONのEFマウントやEF-SマウントなどではEF 50mm F1.8 IIと呼ばれるレンズがある。このレンズは標準ズームレンズキットしか持っていないと言う人が新しくレンズを買うことを期待して作ったレンズである。たくさん作られたために5,000円から10,000円程度で手に入る。Amazonで中古レンズを見たら価格は7800円だった。ちなみにこのあとに50mm F1.8 STMと呼ばれるレンズが作られている。STMはオートフォーカスが静かに回ると言う意味である。ムービーを撮影する時に「ギコギコ」と言う音が入るのを防ぐことができる。新品でも15,800円だった。
価格は2025年12月15日当時
次になんだか野鳥が撮影したくなった
次にやってくるのがなんだかやたらと遠くのものが撮りたくなる病である。
ハードオフで100mm以上のジャンク望遠レンズが1,000円とか1,500円程度で売られている。少しカビが入っていたりして太陽に向けて撮影すると画面が少し白くなったりする。さらに手ぶれ補正機構(CANONではISという)が入っていないため動画を撮影すると画像がブレる。
でも最初はこれでも楽しかった。



しかし、しばらくすると「少し滲んだ感じ」が気になってくる。レンズの色収差問題だ。これが気になりだしたら次のレンズを探す時期かもしれないが、しばらくは遠くのものが撮れるだけでも十分に楽しめるはずである。
このレベルのレンズを買ってみて「これは使うな」となったら本格的なレンズを買えばいいと思う。手ブレ性能に違いがあり、新しく慣ればなるほど手ブレ性能が上がる。オートフォーカスの音が静かなSTMレンズで中古価格は15,000円だった。新品で購入すると35000円になっている。STMではないバージョンは中古で10,000円程度で手に入る。
価格は2025年12月15日当時
この世代のカメラ+レンズは三脚利用が必須だったので「気軽に持ち運んで野鳥を撮る」ことはできない。そもそもレンズを持ち運ぶのも面倒なので「よし野鳥を撮るぞ!」と意気込む必要がある。しかし現在はカメラ+レンズ技術が上がっていて(そもそもレンズの規格が変わったことで信号がやりとりできるようになった)気軽さはかなり向上しているはずだ。
STMだとおそらく手ぶれ補正機構のカツカツという音がなくなる。
「10万円は高いなあ」という人のための選択肢
なぜ個人的経験を書いたのか。それは「本当に写真が撮影したいなら中古という選択肢もある」からである。
- カメラ本体6,600円
- 標準ズームレンズ3,300円
- 望遠ズームレンズ10,000円
- 明るい単焦点レンズ5,000円
EOS Kiss X4でできないこともたくさんある
ただし当然「できないこと」も多い。
- 動画撮影時に「フォーカスを追う」ということができない。つまり一度フォーカスを合わせると変更できない。
- Wi-FiでカメラをPCに接続できない。
- リモートシャッターが5mまでなので50mmのレンズを使って全身を収めた自撮り写真が撮れない。
- 遠距離撮影は三脚必須。
CANONだとソフトウェアのお金は考えなくていい
まず、新品だろうが中古だろうがCANONのカメラを買うと画像が編集できるソフト(Digital Photo Professional)などが無料で手に入る。だから、ソフトウェアに使うお金はとりあえずは考えなくていい。実はカメラだけ買ってもレタッチや編集ができなければ機能を十分に生かし切ることができない。
ただし中古カメラを使う場合には対応するDPPやEOS UtilityとOSの組み合わせ問題が出てくるので、適宜研究が必要になるだろう。
一応デメリットも書いておく
一眼レフカメラの最大の落とし穴は「大きすぎる」こと
さてここまで「一眼レフカメラ」のいいところを書いてきた。ところがやはり落とし穴はある。最大の落とし穴は「カメラバッグを持ち歩く必要がある」と言う点である。このため買ったけど持ち歩かないと言う人もいるかもしれない。さすがにミラーレスになってカメラの大きさは小さくなったが、それでもスマホみたいにバッグに忍ばせておくということはできない。
最初に購入したカメラはEOS Kiss Digitalというカメラだった。3000円程度で入手したと思う。600万画素程度でバッテリーパックを1000円程度で購入した。レンズはジャンクレベルだと純正品の標準ズームレンズ(28mm-80mm)が500円から1,000円程度で売られている。つまり5000円程度で始められるのだ。これで始めて「まあ使ってもいいな」と思ったので6600円のカメラを買うことにしたのだ。

ちなみにこのカメラは動画が撮影できない。またMacとの連携があまりできない。カメラが古すぎて最新のソフトウェアに対応していないからである。
メインカメラとしての一眼レフ+サブカメラとしてのマイクロフォーサーズ
動画が撮影できて持ち運びも苦にならないとなると次の選択肢はマイクロフォーサーズカメラかコンデジになる。重いカメラを持ち運びたくない時にはコンデジだけを持って出かける。また荷物を小さくしたい時にはマイクロフォーサーズカメラが選択肢になる。

本体は3300円だった。レンズは中古としては少し高級品で4500円程度。

これは手ぶれ補正が生きているE-PL3。本体1000円+レンズ1500円(税別)で手に入れた。
カメラが軽いので手ぶれ補正を切っても歩かない限りぶれることはない。ただし歩くとやはり手ぶれがある。またマイクがフォーカスのカラカラという音を拾うこともなかった。ただジャンクで手に入れたレンズのズーム機能が壊れているということもあって(実はこのレンズの持病なのだ)遠くのものが狙えないという欠点はある。
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