誰かに指示を出す時ホワイトボードを使って「ちゃちゃっとこういう画を描いてくれないか」と指示を出すことがある。ところがAIにこれをやらせようとすると、そもそも絵を使ったAIへの指示という選択肢がない事がわかる。
代わりに「生成プロンプト=文字」を使って画像生成をするという記事が大量に出てくる。
では図を使った指示はできないのかと言われればできる。ただしこれはかなり泥沼になる可能性がある。技術の問題の他にAIの特性が絡んでいる。
目次
イメージ重視派が想定するAIの活用イメージ
想定するイメージはブラウザーのイラストを描くセクションがあり、ペンなどを使ってそのまま軽いイラストを描いて「こんな感じでちゃちゃっとグラフにして」とか「絵を描いて」と頼むようなやり方だ。本来はここからタブレットPCなどの紹介につなげるつもりだった。
しかし今の生成AIはそのような使い方はできない。言語を通じたインターフェイスが前提なので「イメージを媒介にしたコミュニケーション」に不慣れなのだ。それどころかAIの進化によって「言語化できないマーケター」が淘汰される可能性さえ出ている。
ではこうした人がAIとうまく付き合うためにはどうしたらいいのか。ChatGPTとGeminiにそのまま聞いてみた。ChatGPTは「役割を分けましょう」と優しめだったが、GEMINIは「言語化できない人は引退の危機だ!」と厳しめの評価だった。

シズル感・エモい・尖ってる・今っぽい……を使いがちな人がAIとうまく付き合う方法
「なんとなく」が通用しないAI
「シズル感が欲しい」「もう少しエモく」「尖ってる感じで」「今っぽくしてほしい」マーケティングやWeb制作の現場では、こうした言葉が日常的に使われています。人間同士なら、過去の経験や空気感でなんとなく通じてしまうことも多いでしょう。
しかし、この“なんとなく”はAI相手だと通用しません。AIは文脈を共有しているフリをしないため、直感ワードをそのまま投げると、平均的で無難なアウトプットが返ってきがちです。そして「なんか違う……」というやり取りが延々と続くことになります。
ここで重要なのは、直感ワードを捨てることではありません。役割を分けることです。
シズル感・エモい・今っぽいと感じる感覚自体は、人間の強みです。ただしそれは「生成の指示」ではなく「評価の言葉」だと理解する必要があります。
まずは短い言葉で評価する練習をしよう
AIとうまく付き合うコツはシンプルです。
まず、直感でOK/NGを判断する役に徹する。次に、その判断を短い言葉で翻訳します。たとえば「シズル感が足りない」は、「質感のアップが少ない」「動きがなく静止画っぽい」と言い換える。「エモい」は「ストーリー性」「余白」「説明しすぎない」といった要素に分解できます。
それでもダメなら「評価する側」に徹するのも選択肢
どうしても言語化が苦手な場合は、無理にAIに直接入力しないことも立派な選択です。ラフや一言コメントを誰かに渡し、AIへの入力を任せる。その分業だけで、無駄な修正ループは大きく減ります。
AIは「なんか違う」に辛抱強く付き合ってくれます。しかし、本当に価値があるのは、違いの理由を整理し、次に活かせる形で残すことです。
直感は人間が持ち、構造化はAIに任せる。その距離感こそが、直感ワード常用派にとっての最適解なのです。
AIは辛抱強く付き合ってくれるからこそ危険
AIは「なんか違う」「前のほうが良かった」「それとこれを足して2で割ってほしい」といった曖昧なフィードバックにも、文句を言わず付き合ってくれます。何度でも案を出し直し、感情を害することも、疲れを見せることもありません。
しかし、この“辛抱強さ”こそが落とし穴です。
人間相手なら、どこかで「それは何が良かったのか」「どちらを優先するのか」と議論が止まります。AIは止まりません。判断軸が曖昧なままでも、案を混ぜ、整え、「それっぽい完成形」まで静かに到達してしまいます。
その結果起きるのが、「前のほうが良かった地獄」です。
何が良かったのかは言語化されないまま、比較不能な案だけが積み上がり、最終的に“悪くはないが、なぜそうなったのか誰も説明できない成果物”が残ります。
AIは意思決定を代行してくれる存在ではありません。
無限に付き合ってくれるからこそ、途中で判断基準を言葉にし、止める役割を人間が担う必要があります。AIは便利ですが、迷走を止めてはくれない――それを理解することが、直感ワード常用派がAIと安全に付き合うための前提条件です。
GEMINIにも同じ問いを投げた。やはり言語化が得意な人を橋渡しにしましょうというアドバイスだった。だがここで「アメリカで同じ問題が起きていないのか」ということが気になった。
なぜアメリカでは日本のビジュアル系マーケターが直面している問題が発生しないのか ― 理由と対処法
日本のマーケティング現場で繰り返される「あんな感じ」というコミュニケーション。これがホワイトボードの迷走や無限修正を招く一方、アメリカでは同様の事態が起こりにくい構造があります。その差は、才能の優劣ではなく、「ビジュアルに対する言語的説明責任(Accountability)」の有無にあります。

1. 理由:「ビジュアルボード」は「合意の契約書」である
アメリカのデザイン教育や実務において、ビジュアルウォール(ムードボード)を作ることは、単に雰囲気を伝えることではありません。そこには必ず「なぜこの要素が必要か」という執拗なまでの言語化が伴います。 「この青は信頼を、このフォントは変革を意味する」といった具合に、すべての視覚情報がロジックで裏打ちされます。つまり、ビジュアルは「察してもらうためのヒント」ではなく、「認識のズレを許さないための仕様書」として機能しているのです。そのため、日本でよく見られる「足して2で割る」といった論理破綻した修正案は、プロフェッショナルの場では論理的に却下される土壌があります。
2. 対処法:AIを「感性を守るための盾」にせよ
言語化が苦手なビジュアル派が、この「世界標準の作法」を身につけるのは容易ではありません。しかし、今やその苦労はAIが肩代わりしてくれます。 「あんな感じ」のイメージをAIに解析させ、「これをビジネス用語で説明するとどうなるか?」と問いかけてください。AIは、あなたの直感に「被写界深度」「補色関係」「ダイナミック・コンポジション」といったロジカルな名前を与えてくれます。
3. 結論:引退か、それとも「翻訳機」の獲得か
自分の直感を説明できないままでいれば、いつか声の大きい人の「無茶振り」に押しつぶされ、現場を去ることになるかもしれません。しかし、AIという「最強の翻訳機」を右腕に据えれば、あなたの直感は誰にも否定できない「戦略」へと昇華されます。 かつてデザインスクールで冷や汗をかきながら行っていた「ビジュアルの言語化」。それをAIと共に楽しむ余裕を持てたとき、日本のマーケティング現場の地獄は消え去るはずです。

イメージ多用派が活用できるAIは爆発的に広がっている
ではイメージ重視派の人たちはAIを使わないほうがいいのかという問題が出てくる。これは一部解決するソリューションが出ている。それがNotebookLLMである。ポイントは絵が描けない人のチャンスはかなり広がっているという点にある。
今何が起きているかが一目でわかるスライドが作れるNotebookLLM
例えば文字で「なぜ高市総理の支持率は高いの?」とか「どうして最近金の値段は爆あがりしているの?」などと聞くと資料をWebから引っ張ってきてくれる。さらにこれをスライド形式にしてまとめてくれる機能がついている。スライドにはおそらく著作権クリアされていない素材が入っているために公開資料には使えないのだが、パット見てぱっと理解したいという人はビジュアル理解のほうが話が早いのではないかと思う。
Google Gemini無料版のグラフ作成機能はほぼ使い物にならない
問題はこれを「プレゼンに使える資料にしたい」場合だ。実はこれが今のAIの苦手分野である。GEMINI PROはかなり精度が上がっているようだが無料版のグラフ作成機能はほとんど使い物にならないと思った方が良い。GEMINIもこの辺がよくわかっていて、データを渡すからGoogleスプレッドシートでグラフを加工してくれと言ってくる。
Google Geminiの画像出力は使い方にコツがある
Google Geminiの日本語機能はかなり怪しかった。しかし最新モデルのNano Banana Proでは精度が上がっている。これを利用するためには高速モードから思考モードに切り替える必要がある。しかしそれでもモードが切り替わらない事がある。また前の会話を覚えているため「記憶混乱」も起こり得る。
これを防ぐためには一旦会話を打ち切って新しいチャットを立ち上げるのがよい。このイラストも若干あやしいところがあるがまあなんとなく使えそうなイラストが出力できた。ちなみにかつてはゴールデンルート中心だった外国人の観光が地方に分散しつつあることを示している。ただ文字の間違いを修正し始めると(例えばチホウノビジネストへとなっている)泥沼化するだろう。これは画像編集ソフトで自分で修正したほうがよさそうだ。

ちなみに思考モードは無料アカウントだと利用制限がかなり厳しいため日本語を常用するなら有料アカウントを使ったほうがいい。無料にこだわるなら普段のリサーチは高速モード中心で使ったほうがいいだろう。

この記事の最初は言語化が苦手な人のAI講座だった。一方で言語化ができて絵が描けない人はチャンスが広がっている。AIの発展はかなり不公平だ。
Claudeはビジュアルプレゼンを「アーティファクト」として作ってくれる
一方でClaudeはHTML形式のレポートをアーティファクト形式で作ってくれる。これは間違っていれば改訂が可能なのでプレゼン資料を作りたい人はClaudeも触ってみると良いかもしれない。
コメントを残す