AI時代のSNSプロフィール設定　具体的な方法

フリーランスや副業などが一般化しオンライン上のプロフィールを充実させる重要性は増しているが、なかなか体系化された情報がない。今回はオンラインでブランドを確立させたい人のためのプロフィール設計について解説してゆく。

法律や経営の専門家（コンサルタント）からフリーランスのクリエイターまで、オンライン上でのブランディングが必要が今すぐ使える内容だが、キャリアの棚卸しをしようというような抽象論ではない。Googleの検索に埋もれず、AI時代を生き抜くための実践的な処方箋を心がけたつもりである。

また実際に作業をして戸惑った点も付け加えた。アメリカ流のプロフィールを出力してくるのでそのまま使うと却ってキャリアに悪いイメージがつきかねないのだ。

AI記事の量産でE-E-A-Tの必要性が増している

SEOの時代が終わったがAIOの時代はこなかった

AIブームの影響でAIが書いた記事が量産されている。このため、Googleが「記事を書いているのは人間なのかAIなのか」を識別せざるを得ない現象が起きている。GoogleはAIと人間の選別に苦慮しておりE-E-A-T（イーイーエーティー）を重要視するようになった。つまり一次体験や実績に裏打ちされたプロフィールを整えることは、もはや単なる自己紹介ではなく「構造化された記事の証」になっているというわけだ。

検索エンジンには「信頼に足る専門家」として認識され、ユーザーには「血の通った人間」としての安心感を与える。この双方のメリットが一致するからこそ、情報の構造化と人間性の証明は、現代の必須戦略になっているのだ。

SNS時代とAI時代のプロフィールの違い

かつて、SNS時代は「フォロワーの数が多ければ良い」と考えられてきた。しかし現代ではフォロワーの数だけでなく「専門性」が問われる。QuoraやLinkedinなどさまざまなSNSが職業・専門分野の肩書とコンテンツを結びつける設計を行ってきたが必ずしも成功したとは言えなかった。また、Googleが「その人の情報を一括して管理する」仕組みも作らなかった。だからこそGoogleにある程度構造化された情報を渡さなければならない。

正しい背景さえ理解できれば過度に恐れることはない

しかし、この変化を過度に恐れる必要はない。かつては専門のコンサルタントに依頼していたような高度な自己分析や情報の構造化も、今ではAIを「賢い壁打ち相手」にすることで、誰でも手軽に行えるようになっているからだ。

自分の断片的な活動記録をAIに正しく提示し、対話を重ねるだけで、客観的で説得力のあるプロフィールが完成する。AIを敵とするのではなく魅力を世に正しく伝えるための「専属広報官」として活用すれば、オンライン上のブランド構築はこれまで以上に身近で強力なものにできるだろう。

デジタル・アイデンティティの構造化

これらの一連の作業を「デジタル・アイデンティティの構造化」という。アルゴリズムがネット上に散らばっているあなたの情報の点と線を結ぶ手伝いをすると理解するとよい。

まずネット上の活動を仕訳

まず、ネット上の活動を仕訳けする。意外なことに「趣味のサイト」の重要性が増しているというのがポイントだ。

1. その人の専門性を裏打ちするストック型のサイト：ブログやNoteなど。本来は自分のドメインを持つとブランディングがしやすいが技術的に困難な場合はNoteやはてなを使っても良い。
2. その人の評価を数値的に示すプラットフォーム型SNS：LinkedinやQuoraなど。閲覧数やフォロワーが規定できる。またこれまでのようなインフルエンサー型であればInstagramやYouTubeなどもできる。
3. その人が人間であることを示すサイトや活動：意外なことに、趣味のサイトであっても「その人が人間として活動している」という証につかえる。

プロフィールを統合する具体的方法論

1. ブランドの起点を決める

まず、起点を決める。

起点は

• 個人サイトのドメイントップ：ブランドを自由に構築できるので本来はドメインを取得した方が良い
• 世界標準のGravatarなどのサービス：とはいえすべての人がブランドサイトをメンテナンスできるわけでもないのだからGravatarなどを使うのも手だ

などが使える。

とにかく構造化が重要なので起点は１つに決める。Gravatarはプロフィールを登録すると関連するサイトをまとめてくれるサービスだ。対応しているサービスであれば認証も可能。詳しい使い方やGravatarの代用サービスについてはGeminiなどが教えてくれるだろう。ただし代用サービスは入れ替わりも激しいので必ず「最新情報に更新してくれる」ようにGeminiに依頼しよう。

2. 枝葉になるサイトを決める

次に、枝葉になるサイトを決める。Noteを使うこともできるが、Wordpressでブログを作ると「メインサイト」の他にサブサイトも作れるだろう。

この段階で、Geminiにプロフィールページ（直近の記事がついているもの）をフィードすると一緒に適切なプロフィールを考えてもらえる。このときに実績のあるSNSがあればそれも添えておくとよい。

実際にやってみると作業はGeminiで担当してくれる。まずURLを表示したうえで「プロフェッショナルとして通用するプロフィール設計をしてくれ」とお願いするとよいが、これはそのまま使わず後で調整しよう。実際にやってみたが「リスクも大きい」と感じた。

3. 必要に応じてトーンを調整しよう

注意：Geminiの最初の出力はアメリカ型。競争が激しいアメリカ型は個人のスキルを100％前面に押し出すのが特徴だが、これを日本の謙虚な文化でやると押し付けがましい人に見られる危険性がある。トーンを調整するために一度このようなプロンプトを通すべきかもしれない。

【プロンプトの構成案】 「あなたは日本のビジネス文化に精通したベテラン広報です。以下の英文（またはアメリカ流の自己PR）を、日本の専門職として信頼されるプロフィールにリライトしてください。

AIは「私の棚卸し」にも使える

TIPS：成果物だけで私の内面が分かるはずがないと考える方もいるだろう。しかしGeminiなどのAIは漠然とした価値観を捉えるのは苦手で構造化されたデータのほうが成果が出やすいという現実がある。

これを代替するために一定期間「これがやりたい」「これが気になった」などとToDoリストやGoogle Keepに１つのメモとしてためてゆくと良いかもしれない。意外と本人が忘れている「本当にやりたいこと」をAIが客観的に見つけてくれるかもしれない。

またAIをインタビューアにして気になったことを質問してもらうという手もある。最終出力をGoogleDocumentsなどに保存してあとから見直せば（一度客観視できる）次からのプロフィール作成に役立てることができそうだ。

Geminiが提案する実際に使えるプロンプト例

ここまでは具体的な作業を見てきたが、最後に各段階で使えるプロンプトをGEMINIに提案してもらった。

パターン1：【情報の仕訳と構造化】バラバラな活動を統合する

散らばったURLや実績を渡し、AIに「客観的な強み」を整理させる時に使う。AIが理解できる構成になっていればあとは実際にマークアップしてやるだけだ。

私は現在、オンライン上のプロフィールを再設計しています。以下の私の活動拠点（URLや実績）を分析し、『専門性』『信頼性（実績）』『人間性』の3つの観点から情報を整理してください。

【私の活動拠点】 ・Note（専門記事）：[URL] ・X（日常・専門）：[URL] ・ポートフォリオ/実績：[URL]

分析後、AIが私を『〇〇の専門家』として認識しやすいような、一貫性のあるブランドコンセプトを1つ提案してください。

パターン2：【文化翻訳とリライト】日本流の信頼感を醸成する

アメリカ型の強い表現を、日本で信頼される「謙虚かつ頼もしい」トーンに調整するために使えるAIプロンプト。

あなたは日本のビジネス文化と広報に精通したベテランコンサルタントです。以下の英文（または強すぎる自己PR）を、日本の専門職として『信頼・誠実・安心感』を与えるプロフィールにリライトしてください。

制約条件： 
・『私が最高だ』という押し出しではなく、『これまでの経験で誰にどう貢献できるか』という視点で書く。 
・専門用語を適切に使いつつ、過度な自慢に聞こえないよう、客観的な事実（数字や実績）を淡々と配置する。 
・最後は、私の仕事に対する思い（志）で結んでください。

パターン3：【内面の深掘り】価値観を抽出するインタビュー

実績だけでなく、内面（価値観）をプロフィールに載せるための「鏡」として使うプロンプト。

私のプロフィールに『自分らしさ（価値観）』を反映させたいです。私の内面を構造化するために、私に対して5つの質問を一つずつ順番に投げてください。

質問の切り口：

仕事で最も大切にしている『譲れない信念』

過去に最も困難だった壁と、それをどう乗り越えたか

最近、心が動かされた出来事とその理由

私が社会に提供したい価値（パーパス）

周囲から『あなたらしい』と言われる特徴

5つの回答が終わった後、それらを統合して、私の人間的な魅力が伝わるプロフィール文を作成してください。

まとめ

AIの登場で記事が量産され優良なネット上のプロフィールや記事が埋もれがちになっている。しかしながらAIを利用してプロフィールを精緻化することもできる。このときにAIを最終出力装置として使うのではなく、最後に決めるのは自分だと考えるとAIをツールとしてあなたのキャリアアップの味方として使いこなすことができるだろう。