AIとSNSデータを使って今起きているダイナミックな業界動向を出力する

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11〜17分

前回は主にネガティブな阻害要因を突き止めるためにマスメディアや検索に出てこない生の声をSNSから拾う手法をご紹介した。今回は業界の構造変化をAIとSNSデータを使って抽出する方法をご紹介する。実はムダに思える対話が重要だ。なぜそうなるかは文章の最後にご紹介することにしてまずは作品例を見ていただきたい。

「作品」例:コーヒー業界の変化

二極化するコーヒー消費

最近、コメやコーヒーの価格が急上昇したなと感じる人は多いだろう。しかしそれが実際にどのような購買変化に結びついているのかはよくわからない。そこでAIを使って言語化・図式化を試みた。コメ消費はコムギに流れているそうだが、コーヒーは市場の二極化が起きているそうだ。そしてこの二極化したうち「意識が高い人たち」はこれまでなかった別の概念とコーヒーを結びつけつつある。

これまでなかった「エシカル」と「コーヒー」が結びついている

おそらくコーヒーや外食産業で働いている人はこのような動きを掴んでいるだろうが、それ以外の業界の人は「こんなことが起きているのか?」と驚くかもしれない。

では、どうすればこんな洞察をAIから掘り出すことができるのだろうか。なにか魔法でも使ったのか。実は「ムダな会話」と「間違い」を使って情報を掘り起こしている。どちらも生産性が低く、コスパが悪い行為とされている。

今回は効率よくスクリプトを組んだが、対話を通じて情報を引き出しても良いかもしれない。

具体的なスクリプト例

「因果関係の歪み」を可視化する

プロンプト例: 現在、コメや光熱費といった『生活必需コスト』の急騰により、消費者の心理的ベクターが極端に防衛へ寄っています。

この重圧が、一見無関係な【コーヒー業界(ここに調査したい業界を入れる)】の消費行動にどのような『歪み』を生じさせているか、SNS上の暗黙知(例:贅沢への罪悪感、惰性への切り替え、代替品への逃避)から推論してください。 単なる『買い控え』ではなく、消費の『意味』がどう変質しているかを定性的に分析してください。

絶望のベクターがわかった後、マーケターが次に打つべき手を提案させる

プロンプト例: 先ほどの分析で、消費者が【コーヒー】を『楽しむもの』から『作業のための燃料』へと格下げしているベクターが見えました。

この殺伐とした心理状況において、消費者が唯一『これなら自分を許せる』『むしろ買うべきだ』と防衛本能を肯定できるような、新しい価値のベクター(希望の出口)を提案してください。どのような文脈であれば、彼らの財布の紐は緩みますか?

「波及の連鎖」を先読みするスクリプト

コメの次にどの業界に火が飛ぶかを予測する。

プロンプト例: 主食(コメ)の価格破壊が、嗜好品(コーヒー)の価値を変容させました。この『生活防衛の連鎖』が次に直撃する、意外な業界と、そこでのベクターの変化を予測してください。 ヒントとして、SNSで『実はもうこれで十分だよね』と諦めや悟りがささやかれ始めている領域に注目して分析してください。

ではなぜこの聞き方が効果的なのか?

ベクター・因果関係・アテンション

まずAIはSNSの膨大な情報を「ベクター」として持っているが、ベクター同士は切り離されている。そもそも意味を数字に変えたのがベクターなので関連性をもたせようがない。だから「トレンド」を聞くと単純にベクターの中からそれらしいリストが出力される。当然平均的なものなのでありふれたものになる。さらにリストの羅列は検品作業が必要になるのでかえって効率が良くない。

そこで人間が因果関係の仮説を与えてやる。この仮説は間違っていても良い。むしろ間違っていたほうが良いかもしれない。AIの反証回路が働くからだ。この過程でノイズが消えて文脈の絞り込み(アテンション)が行われる。

そしてそのアテンションが決まると、AIはSNSの情報を深堀りしにゆくのだ。

直感的に考えるならば「あなたは腕利きのマーケターです、最新のコーヒー業界トレンドを教えて下さい」などと聞いたほうが効率が良さそうだが、実はアイディアの検品作業が発生し却って効率が悪くなってしまうのである。

役割指定(Role Playing)と因果の錨(Causal Anchor)の使い分け

これをもう少し理屈っぽく突き詰めてゆきたい。

役割指定は「特定のユーザーの動向を絞り込む」「適切なプロフェッショナルとして壁打ちの相手をさせる」「あえて批判させる」時には有効だが、ベクターの海から新しい知見を発見したい場合は、あえて間違ってみる「因果の錨=アンカリング」のほうが知見が得られやすい。もちろん、因果の錨(Causal Anchor)という専門用語があるわけではないが「ベクターの海を測量するためにそこに船を留め置く」というような作業が必要なのである。

  • 役割指定:専門的な知見の羅列:「検品」が必要な情報の山(エントロピー大)
  • 因果の錨(アンカー):文脈に沿った深い洞察:「意思決定」に直結する整理された知性(エントロピー小)

生産性を上げる「急がば回れ」

最短距離で答えを出そうとすればするほど、AIはありふれた回答しか出さなくなる。 むしろ、一見冗長に思える対話の中で、自分の仮説をぶつけ、アンカーを深く降ろしていく。 この『ムダ』に見えるプロセスこそが、情報のゴミを排除し、真実を釣り上げるための最短ルートであるといえるだろう。つまり対話を通じて文脈を絞り込む「作業」なのだ。

と偉そうにまとめてみたのだが、実は単にちょっとしたチャットの中から「あれ」と気がついただけだ。つまり、誰でも意外なインサイト(洞察)を見つけることができるということを意味している。普段の生活の中にある何気ない会話をAIに渡してやることで、まだ周りの人が気がついていない洞察を掘り起こすことができるというのが、生成AIの面白いところだろう。

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