後悔しない目的別の「お家映画館」「ホームシアター」の作り方

休日に思う存分「お家映画館」が楽しみたいと言う人が増えている。しかし選択肢が多く何を選んで良いのかわからない。家電量販店にゆくと三十万円くらいのテレビを紹介され「こんなのは無理だ」と思ってしまう。

この記事はできるだけ後悔しないような目的別お家映画館の作り方を整理した。質問は2つだけだ。

  • 音に包まれたいか・机の上で立体音響が楽しめればいいか?
  • お金がかけられるか、かけられないか?

である。

たったこれだけ?と思うかもしれないがこれだけである。

ちなみに現在の主流は「あまりお金をかけずに机の上(のような限られた空間で)立体音響を楽しめる」セットになる。

最後に今持っているPC・Macを使って同じようなシステムが作れないのかを考えてみた。似たような構成は作れるのだがAmazon Primeビデオの公式サイトを見るかぎり「PC・モバイル」ともにステレオまでの音声対応になっている。

音に包まれたい・お金がかけられる

一体どんな人?

音に包まれたい人は「映画館やイベントホールのような体験がしたい人」である。言い換えればある程度の大きさの部屋をそのままシアターにできる人ということになる。現在のテレビはスマートテレビ化しているのでGoogleTV機能が付いた製品を選ぼう。ここにサウンドバー・ホームシアターセットを追加する。このときに部屋の四方にスピーカーを置けるシステムを選ぶと音に包まれる感覚が得られる。イマーシブ(没入体験)ができる環境が手に入る。

GoogleTV付きテレビをAmazonで探そう

何を揃えるのか?

  • GoogleTV機能がついたテレビ(古いものはAndroidTVと言う名前になっている)かAmazon Fire機能がついたテレビ。PanasonicがAmazon陣営でSONYとSHARPがGoogleTV陣営になっているようだ。
  • サウンドバー(セパレートスピーカーシステム)

ポイント解説

セパレートタイプが消えつつある?:サウンドバー・セパレートスピーカーシステムは各社が出していたが、今ではJBL BAR 1000 サウンドバー/7.1.4ch完全ワイヤレスサラウンド(2024年9月現在で第11位)以外はランキングからなくなってしまっている。実はこのジャンルの需要があまりないということがわかる。おそらくランキング依存になっていてランキングで露出が少なくなるとそのまま消えてしまうのだろう。ちなみにJBL BAR 1000の価格は12万円以上だった。

JBL BAR 1000 サウンドバー/7.1.4ch完全ワイヤレスサラウンドをAmazonで

SHARPとSONYで対応が異なる:SONYはCINEMA IS COMING HOMEをグローバル・コンセプトにテレビ+サウンドバー・ホームシアターシステムのカタログを出している。コンテンツ(映画)も含めた総合展開である。一方のSHARPはテレビ単体でできるだけ立体音響が楽しめるような商品構成になっている。当然、テレビの大きさによって音の広がる範囲(サービスエリア)が限定されるが、AI機能が発展しているため、テレビだけを買えばあとはテレビがお任せで対応してくれる。かつてSHARPが日本製メーカーだった時代にはオリジナルにこだわる割にはソフトウェアのUI設計が怪しかったが、今ではGoogleTVが組み込まれている。

お家映画館ではなく「部屋を丸ごとホンモノの映画館にしてしまおう」というコンセプトのSONYの製品群。部屋の形に合わせて自動的に音場が計算され仮想スピーカーを構成するという仕組みになっている。

ソニー(SONY) ホームシアターシステム HT-A9M2 BRAVIA Theatre Quad

音に包まれたい・お金はあまりかけたくない

一体どんな人?

音に包まれたい人の中にも「それほどお金はかけたくない」という人がいるだろう。ただし、ハードオフなどを巡って必要な機材を探す時間はあるかもしれない。この方法だとDolby Atmosが付いたものが手に入らない可能性が高い。

ではDolby Atmosは何が良いのか? 

Dolby Atmosは音をオブジェクト化して動きがわかるようにした全く新しいフォーマットだ。高さの概念があり広がりだけでなく立体的な音響が楽しめる。このためゲームやアクション映画などでは迫力が出るだろう。

だが例えばコンサートで「物の動きがわかったほうが良いのか?」と問われると「そんなことはない」という人のほうが多いだろう。またDolby Atmosはソフトウェアで音響設定をするためDolby Atmos対応コンテンツを5.1ch/7.1chで聞いてもそれなりに楽しめる。

YAMAHAの5.1chサラウンドシステムYHT-S350(SR-301とスピーカー群の組み合わせ)。4,400円くらいだったと思う。
Amazon FireStick

何を揃えるのか?

現行版のChromeCastもAmazon FireStickもドルビーアトモス対応だ。スピーカーなどのシステムが5.1ch/7.1chにしか対応していなくても意外ときちんと立体感は得られる。

ポイント解説

Amazon Prime VideoはDolby Atmos対応だが:Amazon Prime VideoのDolby Atmos対応コンテンツにはきちんと表示があるがオリジナルのビデオ作品が多い。現在ジャック・ライアンを見ながらこれを書いている。Chromecast with GoogleTVでみると「Dolby Atmos」対応と書いてあるが、ブラウザーからAmazon Primeにアクセスすると表示がついていない。これを5.1chシステムで聞くとDolby+表示になっている。バーチャルで7.1chのサラウンドに対応している。

音楽であれば動きはいらない:U2のコンサートをAmazon Primeで聞きながら書いている。部屋の四隅にスピーカーがありまるでコンサート会場にいるかのような感覚が得られる。音楽コンテンツは5.1chシステムで十分という気がする。

なぜかDolby Atmosに消極的なAmazon Prime:AmazonはDolby Atmos対応コンテンツの公開に消極的で全作品対応作品リストが出ていない。Dolbyのウェブサイトがたちなみに一部の国では基本料金だけで利用できるAmazon PrimeでDolby Atomosが廃止されている。

Amazonでも中古品が人気:実はAmazonのホームシアターランキングの最後は中古の5.1chサラウンドシステム(Pioneer)がランキングされていた。Bluetooth対応 HTP-S757という製品で30,000円だった。ここからリンクをたぐると「レシーバー+スピーカーシステム」という別のジャンルにリンクが貼られている。ホームシアターシステムとサラウンドシステムは今や別ジャンルになっている。

目の前で立体音響が楽しみたい・お金がかけられる

一体どんな人?

立体音響は楽しみたいが部屋を丸ごとシアターにするのはちょっとなあと言う人もいるのではないかと思う。この場合はデスクトップで立体音響環境を設定すると言う選択肢がある。この内、お金がかけられる人は新品(といっても最大5万円程度だが)のサウンドバーを買うと良い。テレビを揃えるかどうかは予算次第である。

Amazonのランキングを見ると実はこのカテゴリが最もよく売れている。最近はサブウーハーさえ付けないと言う人も多いようだ。重低音が響きすぎると隣の部屋に迷惑がかかる。Dolby Atmos対応だと音が飛び交うことになるのだが、部屋全体ではなく机の上を飛び交うことになる。

何を揃えるのか?

  • GoogleTV機能の付いた大型テレビ
  • Dolby Atmos対応のサウンドバー(一体型フロントスピーカーシステム)

ポイント解説

ランキングに流されて:実はこのジャンルが一番難しいようだ。AmazonでSONY製品を探すと「ソニーHT-S100F」が第16位にランキングされている。ところが「ドルビーアトモス対応」という製品を選ぶとHTX-8500が出てくる。全く別物なのだがおそらくランキングを取ると下位に沈み出てこなくなってしまうのだろう。どちらも3年前からある旧製品である。SONYがこの分野でかなり苦労していることがわかる。あくまでも主戦場は大型テレビとサウンドシステムの組み合わせなのだと思う。

立体音響が楽しみたい・お金はあまりかけたくない

一体どんな人?

最後は立体音響は楽しみたいがお金はかけたくないと言う人だ。できるだけ既存のシステムを利用しながらデスクトップ型の立体音響環境を整えてゆくことになる。実はSONY HT-S100Fという古い機種が選ばれる理由がよく分かる。CT-380というサウンドバーを使っているのだが。これが結構よく出来ているのである。

SONY CT-380(2.1chシステムで仮想的に7.1chまでの信号に対応する)
Amazon FireTV/ Google ChromeCast/ AppleTV

何を揃えるのか?

既存のテレビかPC用モニター

ChromeCast with GoogleTV(4Kでも可能)かAmazon Fire Stick(第3世代以降):どちらも4980円で手に入る。

5.1ch/7.1ch対応サウンドバー(一体型フロントスピーカーシステム)

ポイント解説

FUNLOGYって何:AmazonのホームシアターのランキングではまずAmazonのFireTV Stickが推されていてその後にFUNLOGYというメーカーのサウンドバーが入っている。テレビではほとんど紹介されていないと思うのだが、YouTubeでは「コスパがバグったPCスピーカー」などとして紹介されている。YouTubeを見て商品選択している人が多いことがわかる。ちなみに本社は千葉市にある。つまり中華ブランドではなく日本の会社だそうだ。

Dolby Atmosは本当に必要?:Dolby Atmosは本当に必要なのがよくわからなくなるのがYamahaサウンドバーのランキングである。ヤマハのSR-B20Aは第10位でSR-B30Aが第19位だ。Dolby Atmos非対応の前者の価格が27,500円でDolby Atmos対応の後者の価格が25,911円なのだから安くて機能が高い方に人気が集まりそうだが、おそらく過去の売上が反映しそのままランキングに残っているのだろう。

手堅くまとまったDENON製品が最もよく売れている:おそらくサウンドバーの人気のポイントは気軽にテレビの音声がアップグレードできるからなのだろう。ランキングでは手堅くまとまった(Dolby Atmosにも対応している)デノン・サウンドバー(DHT-S218K)が第5位に入っている。

ベストセラーデノン・サウンドバー(DHT-S218K)をAmazonで

PCがあるからGoogle ChromecastとかAmazon Fire Stickは買いたくない

極力お金がかけたくない人の中にはPC・Macがあるからこれでなんとかならないかと思う人もいるのではないか。そこで試してみた。HDMI接続ができるPC(LENOVO E-450)とMac(MacMini)で試してみた。

Macの設定方法

  1. Audio MIDI設定アプリを開く
  2. HDMIを選択する
  3. フォーマットから8ch/48.0kHz以上を選ぶ
  4. スピーカーを構成でスピーカーを選びテストする。サウンドバーによって使える選択肢が違う。CT-380だと7.1サラウンドは使えたが7.1リア・サラウンドは使えなかった。

実際に試したところ机のうえ(右前方脇と左前方脇)にスピーカーが有るような印象が得られた。

問題はソースである。ChromeのYouTubeで5.1chを試したがおそらく立体音響になっていない。一方Amazon Primeビデオを試してみたが「これは立体になっているのではないか」と感じた。だがこれも確証はない。サウンドバーはLPCMで接続されているが実際に5.1ch/7.1chで信号が送られているかがわからないのだ。

DVDでも試してみたがサウンドバーではLPCM接続になっている。DVDの信号は立体音響が得られることがわかっている。

ただ「多分立体音響だよなあ」と思って使うくらいならChromecastかFirestickを使ったほうが確実な気がする。

PCの設定方法

実際に立体音響を試してみた

機材は揃えた。では一体何を愉しめば良いのか。昔買ったDVDとAmazon Primeのジェニファー・ロペスのTHIS IS ME… NOWを視聴してみた。もともとDolby Atmosを体験するために作られたコンテンツなので5.1ch/7.1chでも没入感が得られる。まずFireTV StickとCT-380の組み合わせで視聴した。机の上に立体音響が広がる。信号はLPCMではなくDolby+になっている。

ジェニファー・ロペスのアルバムと同時にリリースされるAmazon オリジナル作品『This is Me…Now: A Love Story』はドルビービジョンの魅力的な映像とドルビーアトモスの没入感のあるサウンドでプライム・ビデオでお楽しみいただけます。

Dolbyのウェブサイト

特に立体音響が楽しめるのはジェニファー・ロペスがセラピーの結果、小さかった自分と出会い、過去のトラウマを克服すると言うシーンだ。次第に音楽が立体的に広がって行き、ついに天に向かて喜びが炸裂するという構成になっている。なんのことを言っているのかよくわからないと思うのだが音が広がりオブジェクトが遠くに飛ぶ設定になっている。

さらにシーンは幸せに満ちた他人の結婚式の場面になり祝福の鐘が目の前いっぱいに鳴り響いた。この作品はサウンド・デザインがしっかりしている。

これをリファレンスにして適切に設定したWindows10とMacで同じシーンを再現してみた。同じ様な体験が得られるのだが、公式サイトを確認すると「ステレオ再生」にしかなっていない。つまりCT-380の側で仮想的に再現しているということになる。

最後にYAMAHA YHT-S351で聞いてみた。これは当然5.1chシステムなので音が広がる。また仮想スピーカーではなく実際に音に包まれている。感覚が得られるだけではなく実際にそのようにスピーカーが設置されているためだ。デスクトップ型のサウンドバーだと音場の広がりは目の前だけだがYHT-S351は当然部屋全体が音場になる。

フロントスピーカー
リア・スピーカー

次に「ジャック・ライアン」をYAMAHA YHT-S351で聞いた。コンテンツはDolby Atmos対応だがシステムはDolby Atmosには対応しておらずDolby+止まりである。2.1chは7.1chまで拡張される。

ジャック・ライアンはCIAの分析官(主にデスクワークを担当する)がなぜか尋問を任されて戦争に巻き込まれるという話である。LOSTの制作チームが作っているそうだ。このシステム構成だと目の前で銃の乱射が行なわれており、時々背後から銃撃音が聞こえる。つまりこの記事を書きながら「戦場の中にいる」気分に浸れる。

5000円弱のシステム+5000円弱のChromeCast with GoogleTV(中古で手に入れたので1500円〜2000円くらいだったと思う)を組み合わせて配送料無料の「おまけ」のサービスでここまで楽しめるのか……と思うとかなりトクをした気分になる。


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