ELSONICは買うな

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少し前にELSONICの電気ケトルを買った。毎日使うものだけに細かい点がストレスになる。ただ「どうせ安いし文句を言うのはやめておこう」と思っていた。ところがある日突然、焦げたような変な匂いがするようになりやがて電気が通らなくなった。ついに壊れたのだ。1年程度で「こんなにすぐに壊れるんだ」と思った。

細かいところが雑に作られたELSONICの家電

見れば見るほど細かいところが雑に作られている。ノジマのプライベートブランドだそうだがおそらく担当者は白物家電を軽く考えているのだろう。日本の製造業も落ちたものだと感じる。ということでプライベートブランドは避けて今度はデロンギ(De’Longhi)のものを買ってきた。

デロンギ(De’Longhi)の電気ポットはこちらから

左が新しく買ったデロンギのポット・右が突然壊れたELSONIC

壊れたのはスイッチ部分

壊れたのはスイッチ部分だった。下に押すとスイッチが入るようになっているのだがなんだか心もとない感じの安っぽいスイッチになっていて気になっていた。一方で新しく買ったデロンギのスイッチはしっかり作られておりLEDランプもここに搭載されている。

なんだか安っぽいELSONICのスイッチ
デロンギのスイッチ

しかし原因は雑に作られた注ぎ口だった

しかしながら壊れた原因はこのスイッチではなく注ぎ口だ。実は注ぎ口の設計が雑になっているのでゆっくり注いでも急いで注いでもどっちみちお湯が溢れてしまう。このため雑巾を下に敷いていた。

ここから湿気がスイッチ部分に入りこみ電気回路に問題を引き起こしたのではないかと感じている。お湯がこぼれてやけどを思想になるだけでなく電気的にも危険な製品だったのだ。分解しようと考えたがネジを外しても分解できないようだ。

ちなみにデロンギの注ぎ口は三角形になっておりこぼれることはない。ボタンを押すと蓋が開く仕組みもある。こうした細かいところに配慮されているのが一流家電メーカーである。

細かいところだが注ぎ口がきちんと設計されている。
ワンプッシュで蓋が開く

このような細かい点はフィルターにも現れている。どちらも注ぎ口にフィルターが付いており洗えるようになっている。しかしELSONICのフィルターは非常に外しにくくフィルターもナイロンのような素材になっている。一方でデロンギはフィルターが外しやすくメッシュも金属製だ。

デロンギと言うとなんだか高価なように思える。しかし、今回購入したのはアクティブシリーズと呼ばれる安いタイプで価格も5000円以下と言ったところ。毎日使うものだからこそ細かいところが気になると言える。日本のプライベートブランドはもはや白物家電としての基本的な使い勝手すら考慮されていないようだ。

ただしELSONICはもう電気ケトルは作っていないようだ。このため口コミじたいがあまり存在しない。

IT Mediaが考えるデメリット

ここまでは個人の感想なのでIT Mediaが考えるデメリットを挙げておきたい。

  • 外部委託のため安価かつすぐに製品をラインアップに加えられるが、販売者が品質に責任を取れない
  • 修理対応ができないので不具合が出ると新品対応になってしまう
  • 販売が突然打ち切られる可能性がある

そもそもなぜノジマが家電を作ろうとしたのか

オリジナルLED電球から始まったELSONIC

ノジマのウェブサイトを見ると東日本大震災をきっかけに自社製品のLED電球を作り始めたのがきっかけとされている。LEDは2009年頃から出始めているが、2011年は計画停電などがあり省エネに関心が高まっていた時代である。LED電球は2011年には2000円程度で売られていたそうだがその後1年程度で価格が急激に下がり2013年にはダイソーでLED電球が発売されるなどどんどん価格が下がっていった。

サプライチェーンの破壊と家電メーカーの海外流出が同時進行した2011年以降の日本

しかしながらこの時代は製造業のサプライチェーンが寸断された時代でもあった。そもそもリーマン・ショックをきっかけにデフレマインドが定着しておりこれが政権交代のきっかけとなった。このデフレ・マインドは政権がもとに戻るまで続いた。

2011年の東日本大震災後、日本では電力不足を背景とした節電意識と長期的な経済の停滞による節約志向が定着した。消費者はブランド名よりも「価格と必要十分な機能のバランス(コストパフォーマンス)」を重視する価格志向へと大きく変化といえる。

この変化に対応して、家電量販店や小売業者は大手メーカー品より安価なプライベートブランド(PB)製品を強化し、市場での存在感を高めた。ノジマのELSONICもその一例である。これらのPB製品は過剰な機能を持たず安価な部品調達とシンプルな設計により低価格を実現している。

一方で、日本の家電メーカーは震災で露呈した国内生産拠点の脆弱性と、国際的なコスト競争の激化に直面した。その結果、リスク分散とコスト削減のため、サプライチェーンの拠点を中国や東南アジアを中心とした海外へ加速度的にシフトさせた。

特に電子部品の調達や完成品の組み立て工程は海外依存度が高まり日本の家電産業のサプライチェーンは国内回帰ではなく安価で強靭なグローバル調達・生産体制へと大きく再編されたのだ。

この一連の変化は、消費者の購買行動と産業構造の両面から日本の家電市場を大きく変えることになった。

おそらくELSONICはLED電球など単機能のものは作れるようになった。しかしキッチン家電などは細かなパーツの配慮を長年積み重ねてゆく必要がある。こうした情報はおそらく「クレーム」のような形でお客様相談室に溜まってゆくのだろう。しかしELSONICの電気ケトルにはこのような工夫は見られない。ユーザーも「安いから壊れてもいいや」と思っているのだろうし、例えクレームを受けても諦めてくださいというか新品との交換になる。つまり実際に作っている人たちにフィードバックが送られることもないのだ。

さらに日本人が持っていた「職人気質」のようなものも海外には受け継がれなかったのではないかと思う。受注されたメーカーが「こうした方が良いですよ」と提案しても「価格的に見合わないから」という理由で受け入れてもらえないかもしれない。

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