惜しいAIの使い方とは?
本日のテーマはAIと生産性だ。最近YouTubeを見ていると「AIのプロ」と言われる人たちが盛んにプロンプトスクリプティングのやり方を解説している。ところがよく聞いてみると「それって生産性を上げるどころか下げてしまうんじゃないか?」と思える使い方が多い。ただ、言語化できるわけでもないのでAI(GEMINI)に「これって生産性が上がらないですよね?」と聞いてみた。その会話をもとにプロンプトを作りイラストに仕上げてもらった。
目次

1. アイディア千本ノックの地獄
よくあるのが「アイディアを100個出して」というもの。一見素晴らしいアイディが量産されるように思えるのだが、実はその後の検品作業という別の地獄が待っている。言われると「ああそうだよね」と思えるのだが、AIには魔力があり「なんか素晴らしい宝物が発掘できるのでは?」と思えてしまう。

2. 空虚なスライド製造装置
次も話も言われてみればそのとおり。スライドの中身についてじっくり議論をしたほうがいいのだが、コンセプトをまとめること=スライドを作ることになってしまったからこそ起こり得る「あるある」である。

3. タイパの勘違い
これはなかなか人間では出てこない指摘かもしれない。タイパを意識して待ち時間を使って別の作業をすると脳科学的に却って生産性が落ちてしまう。
しかしやっている人は「待っている時間=ムダ」だからなにか別のことをやって時間を埋めたいと考えている。ちなみにコンテキスト・スイッチとは「作業の切り替え」という意味だが、スイッチするたびに脳に負荷がかかり「オーバーヘッド」という時間がかかる。
ちなみに最近「複数のAIを同時に走らせる」というサービスのCMを見た。

まとめ
ちなみに何が間違っているのか?とGEMINIに聞いてみたのだが
まとめ: これらに共通するのは、人間の脳が楽をしようとして、逆に判断コストを増やしているという点です。
道具(AI)に使われるのではなく、道具を使いこなす側でいるためには、「まず自分がどうしたいか」という仮説を持ってからAIを叩くという順序を崩さないことが重要です。
という回答が帰ってきた。「ごもっとも」と言うしかない。

ではなぜこんなYouTubeが量産されてしまうのか?
直接の原因は明治維新の成功
直接の原因は「西洋の正解を精密にコピーして再現する」という明治維新の考え方だ。生産性を上げるためにはできるだけ短い時間でたくさん作れたほうがいいはずだと言う考え方があった。
日本型教育に埋め込まれた
この雛形が日本型教育に埋め込まれた結果
- 「プロセス(努力)」を美徳とする文化:ドリルを仕上げる、ノートをきれいにまとめるという「作業量=成果」という考え方がある。結果的に数をこなさないと不安だというキモチが刷り込まれることになる。仮に「計算ドリル症候群」ということにしよう。
- 「正解」を外側に求める姿勢:特に受験勉強は「正解は外にある」と考える。だから教科書を教えることが授業の中心になる。正解が見つからなくなると「探し方が悪いからだ」ということになりがちで、数をこなすという発想になるのだが、実は「検品作業」が必要になる。
- 「平均点」の呪縛:極端な強み(尖り)ではなく、欠点がないアイディアを求めがち。このためAIが出してきたアイディアも「いやこれはどうかなあ」と削られてしまう。結果的にたくさん作業をして魅力を削るということになりかねない。
という日本型教育が誕生した。
AIは日本型の悪い慣行を暴走させかねない
ここから分かるのは、AIは使い方によっては生産性を上げるツールになるが使い方を間違えると「これまで積み上がってきた慢性疾患のような症状」を悪化させかねないという点だ。
ChatGPT曰く
- AIが登場したから仕事が変わったのではない。
- 「正解が外部にある」という前提が崩れたから、これまでのやり方が通用しなくなったのだ。
- だからAIも、従来と同じアプローチで使うと失敗する。
- これは一時的な流行ではなく慢性疾患のようなもので、業務フローを徹底的に見直し、「どこで意思決定の負荷が発生しているか」を意識的に分析しない限り、改善は起きない。
だそうだ。
AIの使い方が間違っていることが直感的に分かるチェックリスト
ということでこの議論をChatGPTにフィードして「これを感じはじめたら危ないぞ」というリストを作ってもらった。時々思い出してみるとよさそうだ。
- AIで大量に出すと仕事している感じがする:計算ドリル症候群に陥っている。病気の初期段階。しかし量は可視化されているので「なにかやった感」がある。
- 選択肢が多いほど安心する:選択肢は適切な数に抑えておかないと意思決定の負債に変わる。選択肢が多いと焦るはずだが多いと安心するのはすでに何も決めていない証拠。だんだん感覚が麻痺し始めている。
- 「あとで決める」が常態化している:この段階に入るとすでに決めることを放棄している。
ただしこの「病気」を防ぐためには、普段の作業プロセスをみんなで見直して「ここは意思決定上の負荷になっている」と徹底的に考える必要がある。例えば現場の人が「このプレゼン資料は必要なんですか?」と言っても「上の人」が決め手になる情報がないと主張するかもしれない。
かつては「でも会社ってそんなもんだ」で終わっていたが、今では「何も決めてくれない・何も決まらない」会社は社員から離反されかねない。まずはトップからこのリストを使って自分たちの意思決定プロセスを検証すべきだろう。
実はアメリカでも起きている
ChatGPTによると同じようなことはアメリカでも起きているそうである。
- Decision Fatigue(決断疲れ / 選択疲れ):アメリカ版アイディア1000本ノックによる判断疲れ。
- AI Busywork(AIによる「忙しいフリ」作業):アメリカ版「計算ドリル症候群」だがアメリカの場合には作業ではなくアウトプットになりがち。
- Productivity Theater(生産性劇場):最新ツールを使いこなすオレに陶酔する人を揶揄する言葉。
- Output without Ownership(オーナーシップなきアウトプット):素晴らしいプレゼン資料を作ったが内容が自分の言葉で語れない人が増えている。

コメントを残す