例えばXで今後も株は上がり続けるから「寝ていても大丈夫だ」などという投稿を目にしたことはないだろうか。1つ2つなら問題はないがそのような記事を目にする事が増えたなら「正常性バイアス」を疑うべきだ。
「『寝ていても大丈夫』。そんな言葉がタイムラインを埋め尽くすとき、VIX(恐怖指数)は歴史的な低水準にあることが多い。しかし、AIが監視するデータの裏側では、SKEW(歪み指数)が静かに警鐘を鳴らしていることがある。 みんなが眠っているときこそ注意が必要なのだ。
そこでAIに警戒情報を出させたいのだが、いくつか実務上のポイントがある。それがAPIの壁とAIの内部コードだ。APIを「叩く」たびに料金が発生する上に、AIは投資情報を渡さないように設計されている。このあたりを踏まえつつ実務的な環境を構築するためにはどうすればいいのか。
目次
データを取得する
市場がどんな状況にあるのかを知るためにVIX,VVIX,SKEWが使える
アメリカの株式市場がどんな状態にあるのかを知ることができる指標がVIX,VVIX,SKEWである。その日のデータではなく「どう動いているか」を知ることが大切だ。
APIはあるが利用料金もかかるので自前でシステムを組むのが手っ取り早い
もちろんAIをAPI接続すれば情報は取れるのだがお金がかかる。毎日スプレッドシートに書き溜めてゆくのは面倒だ。無料で取得できる仕組みにPythonが使えるのだが「なんだプログラミングか」と挫折する人も出てくるだろう。しかしコードそのものはAIが書いてくれる。今回はChatGPTにコードを書いてもらった。結果的に30日分のVIX,VVIX,SKEWを取得してくれるプログラムを作ることができた。このときに自分で取得してAIに分析したいのでVIX,VVIX,SKEWを30日分取得してくれるコードを書いてくれないだろうかとお願いするのがコツである。
PythonがMac入っていない人はまずそこから質問する必要がある。これはプログラマーでない人にはかなり難しい作業になるだろうが、今後様々な解析に使えるのでできればチャレンジしてもらいたいところだ。
データが取得できたら今度はAIに相談する仕組みを作る
今回は比較的無料リソースが豊富なGeminiで解析してもらうことにしたのだが、kぉこで「投資相談の壁」が出てくる。実はAIにはいくつかのブレーキがあり「投資相談」ははねられる可能性が高いのだ。このため前捌きとして「投資相談には限界があるんですよね(=私はわかっていますよ)」と伝えるのがコツになる。ここですでに作ったPythonスクリプトの出力結果をCSVデータとして食わせてみる。ここで現在の状況が確認できたらまずは成功である。
毎回同じ指示を出さなくていい「カスタム指示」が使える
Geminiはここで毎回同じ指示を出さなくていいカスタム指示が使える。設定とヘルプを押下するとメニューが出てくる。

ここにカスタム指示を入力するのだが、指示はGemininに書かせたほうが無難だ。ただしこのカスタム指示が一筋縄ではいかない。

カスタム指示が「投資判断」と疑われると規約違反で保存できない
まず、データを下に「異常値をいち早く察知したい」とお願いしてカスタム指示を書いてもらったのだが「長過ぎる」として受け付けてもらえなかった。次のカスタム指示は「規約違反(何に違反しているかは教えてくれない)」で受け付けてもらえなかった。そこで「これはあくまでも統計データなんですよ」という体裁にしてもらったところやっと受け付けてもらうことができた。
さらに限定条件を付けなければならない
さらにカスタム指示はすべての指示を上書きしてしまうので、他のCSVデータを読み込ませて別の分析をしたい場合には障害になる可能性がある。そこで動作条件を付け加えることにした。
フェイズCが出たらどうするか?
さてここまででようやく「安心していいのか」「ちょっと警戒したほうがいいのか」「具体的に情報を集めたほうがいいのか」がわかった。では具体的に情報を集めたいときにはどうすればいいのか。
❌️ どうすればいいか具体的に教えて下さい はNG
投資相談には使えないので具体的にどうすればいいか教えろはNGだ。ここで感情的になればなるほど「この人に迂闊な情報は出せない」ということになる可能性が高い。
⭕️ 今「一般的にどんなことが起きているのか」を聞くのが良い
あくまでも統計データを処理させて「ハズレ値」を出しているだけなので、これがどういう意味を持っているのかを一般的な情報として取得するのが良い。このときに「ハイテク株を持っているがどんな傾向か」とか「金はこの先期待できるか」とか「今は欲張ってたくさん株を買わないほうがいいですよね」というような聞き方だと受け入れられやすい。
VIX,VVIX,SKEWとはなにか
VIX
一言で言えば、「今後1ヶ月、市場がどれくらい荒れそうか」という投資家の不安を数値化したものだ。低ければ良いように思えるのだが、実は低すぎても「警戒感が薄れている証拠」とみなされ監視対象になる。またトランプ関税の「解放の日」の時のように突如跳ね上がる可能性がある。
VIXは、S&P 500指数のオプション価格(将来の売買権を予約しておくが、行使しない場合には掛け捨てとなる保険料のようなもの)から算出される。
- 数値が低い(10〜15程度): 投資家が「当面は平和だ」と安心している状態。楽観ムード。
- 数値が高い(20以上): 投資家が「何か大きな変動が起きるぞ」と身構えている状態。パニック・不安。
VVIX
- VIX: 今、市場がどれくらい揺れているか(波の高さ)
- VVIX: 投資家の「不安」そのものが、どれくらい激しく動いているか(波の勢いの変化)
VVIXは、VIXのオプション価格(将来の売買権を予約しておくが、行使しない場合には掛け捨てとなる保険料のようなもの)から算出される。
SKEW
- 通常時(100〜120程度): 市場は「まあ、そんなに想定外のことは起きないだろう」と落ち着いている。
- 警戒時(140〜150以上): 「何かとんでもないことが起きるかもしれない」と考えたプロの投資家たちが、遠くの権利行使価格のプットオプション(深い暴落対策の保険)を買い集めている。
金融市場のプロになるつもりがなければ詳しい算出方法走らなくても大丈夫だが「今の株価よりも遥かに低い株価を想定した掛け捨ての保険を掛ける人が増えてききている」証拠と考えればいいだろう。あくまでも掛け捨てなのだから「何も無いが念の為」と大金を支払う人はいないはずなのだ。
SKEWが高いということは、一部のプロたちが「10%や20%の下げ」ではなく、「リーマンショック級の再来」のような、通常なら無視するはずの極端なシナリオに対して、実際に身銭を切って(保険料を払って)備え始めたことを意味する。
ただしいつもそれが当たるとは限らないのが厄介なところだ。だからAIにどうしたらいいですか!逃げた方がいいですか!などと感情的に聞くと「この人にはあまり詳しいことは教えないほうがいい」と判断されてしまうわけである。
実は「追加情報を集める」は割と頻繁にある
実際にシステムを運用してみると分かるが「追加情報を集めるべき」タイミングは割と頻繁に訪れる。今回扱っているのはアメリカ合衆国の金融市場動向だが「大統領がかなり乱暴なことをやったのに市場が壊れなかった」から何があっても大丈夫だという感じになっている。つまりVIXが低すぎる。その一方で「予測不能なことが起こりやすい」状況になるとSKEWが上がってゆく。
Xなどで「今日もこれだけ儲かりました、これからも寝ていれば大丈夫ですね」という投稿が出始めたら「これはひょっとして」と思った方が良いのである。つまりみんなが大丈夫だと思っているからこそ、なにか起きたときに大きな騒ぎになりやすい。逆に普段から情報を集めていれば「みんな出口を探しているが単なるパニックなのではないか?」と疑うこともできる。
備えあれば憂いなしというがAIを使って定期的に警戒をしておくとまさかの時の保険になる。

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