REDAの生地を使ったジャケットとパンツのご紹介。これは「正解」がわかっているので、着るのに困ることはない。要するに肩パッドがなくスリム目に作られており、誰でも平均点が取れる仕上がり。


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REDAとは
1865年、イタリアのテキスタイル聖地ビエラ地区で創業したREDAは、150年以上の歴史を誇る名門ミル(織物工場)だ。同社の最大の特徴は、ニュージーランドに3つの自社牧場を持ち、羊の飼育から原毛の調達、さらには生地の織り上げまでを自社で完結させる「一貫生産体制」にある。この徹底した管理能力により、アルマーニを筆頭とする世界のトップメゾンへ高品質な素材を供給する一方で、近年では日本の量販店との提携を通じて最高級ウールの『品質の民主化』をも成し遂げた。伝統的な職人技と最新のテクノロジーを融合させたその生地は、今もなお世界中の洒落者たちに「手放せない一着」としての信頼を与え続けている。
この近代化に大きな影響を与えたのは現CEOであるエルコレ・ボット・ポアラ(Ercole Botto Poala)氏だ。
- 垂直統合の完成: ニュージーランドの自社牧場での羊毛生産から、イタリアでの製織・仕上げまでを一貫管理する体制を盤石にした。これにより、品質の安定と圧倒的なコストパフォーマンスを両立させている。
- サステナビリティの数値化: 2020年にはB Corp認証(環境や社会に配慮した企業に与えられる国際認証)をイタリアの羊毛紡績企業として初めて取得した。これは「良い生地」の定義を、単なる触り心地から「生産背景の透明性」へと引き上げた象徴的な出来事だった。
- デジタル・トランスフォーメーション (DX): 伝統的なテキスタイル業界にあって、3Dサンプリングやデジタルカタログをいち早く導入した。
新セレクトショップから洋服の青山まで 多角的なパートナーシップ
このREDAの近代化路線に乗ったのが、セレクトショップ旧御三家に対抗して急成長したNano Universeや洋服の青山の高級路線ブランドであるUniversal Languageだった。
ナノ・ユニバース:モードの民主化とスピード経営の勝利
2002年の創業以来、ナノ・ユニバースが旧御三家を脅かす存在へと急成長した最大の理由は、伝統よりも「今、何が流行しているか」に特化した独自のポジショニングにある。彼らは、エディ・スリマンが提唱したタイトでセクシーなシルエットを日本の標準体型に合わせていち早く「リアルクローズ」へ翻訳し、若年層の支持を独占した。さらに、2010年代には業界に先駆けてECシフトを断行し、売上の半分をデジタルで稼ぎ出す効率的なビジネスモデルを確立。このスピード感と、「LIBRARY」ラインに見られるようなREDA等の名門生地を背景にした高いコストパフォーマンスが、合理性を重視する現代のファッション層に完璧に合致した。



ユニバーサルランゲージ:量販店の枠を超えた「品質の民主化」
国内スーツ市場で圧倒的なシェアを誇る青山商事が、既存の「量販店」のイメージを打破すべく展開したのがユニバーサルランゲージ。彼らの勝因は、巨大な資本力を背景にした「圧倒的な買い取り力」を武器に、REDAのような名門ミルの最高級生地を、従来のセレクトショップでは不可能な価格帯で市場に投入した点にある。特に「Associazione Sartoriale」を掲げたラインでは、イタリアの伝統的な仕立ての技術を日本人の体型に最適化し、実用性とエレガンスを両立させた。伝統を守るために販路を広げたREDAの生存戦略と、高級路線の民主化を狙った青山の野心が合致したことで、かつては一部の特権だった「本物の素材」が、日常のワードローブへと解放された。



代わりに「デコード」の愉悦が消えた
一方で「デコード」の喜びは失われた。これ「失敗できない」現代ならではの事情がある。ECが台頭し「試着して自分ならではの服を選ぶ」ということではなくなりつつあるのだ。
- 「正解」が最初から提示されている: 彼らの服は、過去の経験を元に着た瞬間に「シュッとして見える」ように計算されている。本来、アルマーニやポール・スミスがそうであるように、大きなサイズ感や独特のドレープを「どう着こなすか(デコードするか)」という試行錯誤の余白がない。これはECに合わせたせいともいえる。失敗しない服が求められる様になったのである。
- 体型の補正という名の「均質化」: 日本人の体型に合わせて「最適化」された型紙は、誰が着ても80点の正解を出してしまいます。それは便利な道具ではあるが、服と自分の体が対話しながら「新しいシルエットを捏造する」というアーカイブならではの醍醐味を奪ってしまった。
- 機能美への収束: REDAのSuper 110’sのような高品質な素材でさえ、彼らの手にかかると「シワにならない」「扱いやすい」といった実利的な機能へと意味が固定される。「この生地の揺らぎに、ビエラの羊たちの息吹を感じる」といった妄想(デコード)の入り込む隙はあまり残されていない。
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