YAMAHAサウンドプロジェクターYSPシリーズの歴史

現在はサウンドバーとシアターシステムの2つの製品が主流だがサウンドバーが出てくる前の過渡期システムとしてサウンドプロジェクター(以下YSP)というジャンルが存在した。現在でもAmazonではYSP-2700だけが売られておりYamahaのカタログにも入っている。

YSP-2700をAmazonで

歴史を辿ると前に全てのユニットを集めるためにかなり無理をしていることがわかる。初期のバージョンはあまりにも大きいためにラック付きで売られていたものがある。最終的には小型化に成功するのだが、その頃にはモジュール型と気軽に買えるサウンドバーが主流になっていた。

音の広がりはもちろんスピーカー別だてのシステムが最も広い。だがYSPも音の広がりをきちんと感じることができる。これに比べると現在のバーチャルサラウンドのサウンドバーの広がりはやや劣る感じになるのだが最終的には気軽さに負けてしまったようだ。

Bluetoothビルトイン型が主流になる中で途中まで独自展開するモジュールでiOS機器やPCと接続させようとしていた時代もある。

第一世代

YSP-1(2004/12)

スピーカーをたくさん置かなくても5.1chに対応するというのが売りだったが、重さが15キログラムあった。イギリスの1Limitedという会社が開発したデジタル・サウンド・テクノロジーを採用していた。また最初の製品は2メートルの距離が必要だった。地デジの放送開始が2003年なのでまだ地デジが一般的ではなくDVDなどの利用を想定していたものと思われる。つまり5.1chシステムそのものが贅沢品だったという時代である。

2003年11月にはSONYからHT-K3という5.1chの小型ホームシアターシステムが発売されている。Yamahaからは2004年にはTSS-10(2002年10月), TSS-15(2004年10月)という小型の5.1chシステムが出ている。その後2008年にはTSS-20が発売された。デスクトップシアターシステムという触れ込みだが結局そのまま消えてしまった。

第二世代

YSP-800(2005/9)

第二世代のYSPのうちの廉価版。横幅が80cmと既存のサウンドバーの横幅になっているが、高さはそれなりにあったためにラックに入れることが前提になっていた。ここで初めて調整用マイクインテリビームがついた。YSP-1はメニューが英語表示だったそうだが、ここで初めて日本語化した。YAMAHAはYSPを100億円市場にすると意気込んでいた。

YSP-1000(2005/9)

第二世代のYSPのうちでYSP-1の後継機とされていた。ここで初めて調整用マイクインテリビームがついた。YSP-1はメニューが英語表示だったそうだが、ここで初めて日本語化した。YAMAHAはYSPを100億円市場にすると意気込んでいた。

マイナーアップデート

YSP-1100(2006/11/1)

第二世代YSP-1000のマイナーバージョンアップと思われる。

第三世代

YSP-500 (2007/10/4)

YSP-4000があまりにも大きいためにエントリーモデルが作られた。ここまでHDMI端子がなかった。また、YSP-HT500というサブウーファー付きのモデルが売られていた。

YSP-4000(2007/10/22)

あまりにも重いため専用ラックシステムが売られていた。HDMI CEC対応が「売り」になっていた。

YSP-900(2007/2/22)

小型モデルという触れ込みだったがそれなりに高さがあるためYSP-LC900というラックシステムを売っていた。リモコンのある場所にビームを飛ばすマイビームという機能が継承されたことが売りになっていた。

2007年3月にDENON DHT-FS1というフロントスピーカーだけで構成するラックモデルが出てきた。SONYが最初のフロントスピーカーだけで構成されるサラウンド機器HT-CT-100を発売したのが2008年7月なので、次第にケーブルさばきが面倒なシアターシステムが嫌われるようになっていったのがわかる。

第四世代

YSP-3000(2008/1/17)

まだワンボディ性にこだわっておりラック付きのモデルも健在だった。ラックはテレビの大きさに合わせて、YSP-LC3000とYSP-LCW3000が存在した。デザイン性を統一しようという試みだった。

YSP-600(2008/4/9)

YSP-500にHDMI端子をつけたエントリーモデルという位置付けだった。奥行きが22cmあるために設置性に疑問があるなどと言われていた。今回手に入れた唯一のYSPだ。HDMIから音が出ないという理由で2200円で売られていたがメニューでHDMIの出力を止めていただけだった。リモコンがないとメニューが変更できない。マイビームというリモコンのある位置にビームを合わせる機能がついているのでリモコンがあるものを手に入れたい。

コンパクトなエントリーモデルという触れ込みだが、ものすごく大きい

2.1ch対応のホームシアターコンポーネントが発売

2009年10月20日にサウンドバータイプでありながら将来5.1chに対応するYHT-S400とブックシェルフ型スピーカーを2つつけたYHT-S350が発売された。HDMI連動の新システムなどと宣伝されていた。

サブウーファーは本体と一体化していた。翌年には5.1chに拡張できるシステムが発売されるのだが、このときには2.1chまでしか対応されていなかった。

YSPはリアルサラウンドという触れ込みだったがこちらの系統はAIR SURROUND XTREMEというバーチャル技術に対応していて仮想的に7.1chを構成することになっている。このため最初はリアスピーカー要らないという想定だったのだろう。YSPシリーズと何が違うのか?について解説したウェブサイトの記事なども見られる。

UBSやBluetoothには対応しておらずBluetoothは別コンポーネントが必要だった。またファームウェアのアップデートはCDを使って音声でアップデートするという方式だったようだ。ファームウェアのアップデートはこの頃はやっていた3D映像をパススルーできるようにするためのものだった。

第五世代

YSP-4100(2009/11/5)

Bluerayが一般化したために7.1chに対応した。Bluetoothが内臓ではなく外付けになったものだがAir Wiredという独自名称をつけて別売りで売っていた。

YSP-5100(2009/12)

高音質化を図ったためにビルトインのサブウーファーが重くなってしまった。このため50インチのテレビ用の高品質モデルとして売っていた。Bluetoothが内臓ではなく外付けになったものだがAir Wiredという独自名称をつけて別売りで売っていた。またPDX-W61という別売りのポータブルプレイヤードックに音を飛ばせるようになっていた。

YSP-2200(2010/9/1)

初めてサブウーファーが分離した。別売りでAirWiredシステムが搭載された。Bluetoothが内臓ではなく外付けになったものだがAir Wiredという独自名称をつけて別売りで売っていた。

サウンドバーの第一世代が発売

サウンドバータイプのYAS-101が2011年9月10日に発売された。ようやくYAMAHAもフロントだけで構成されるサラウンドスピーカーシステムが必要だということに気がついたことになる。

YAS-101

またサウンドバータイプでありながら将来5.1chに対応するYHT-S401とブックシェルフ型スピーカーを2つつけたYHT-S351が発売された。このころもまだBluetoothには対応していない。

YHT-S401とS351のコアユニット

2010年にSONYが薄型バーチャルのサウンドバーHT-CT350を出している。HT-CT350も3D対応だったがBluetoothは別ユニット対応だった。HT-CT350はシンプルなモノリシックデザインという触れ込みだった。

第六世代

YSP-4300(2012/11)

YSP-2200のサブウーファーは有線・パッシブだったが、無線・アクティブになった。YSP-3300に比べてスピーカーの数が多い。USB経由でiPodからデジタル音声を受け取ることができるようになった。だが、まだiOS機器のために専用のトランスミッターもついている。つまりBluetoothで接続しようという発想はなかったことになる。

YSP-3300(2012/11)

YSP-2200のサブウーファーは有線・パッシブだったが、無線・アクティブになった。YSP-4300に比べてスピーカーの数が少ない。だが、まだiOS機器のために専用のトランスミッターもついている。つまりBluetoothで接続しようという発想はなかったことになる。

第七世代以降

YSP-1400(2013/10/15)

5.1chモデル。サブウーファーは足にビルトインされていた。ここで初めてBluetoothに対応した。4万円程度で購入される手軽なタイプとされていた。Bluetooth対応なので当然アプリで操作できるようになった。

YSP-2500(2014/7/8)

テレビの薄型化が進むにつれて、日本の小さな部屋でも気軽に楽しめるサウンドバーの方がよく売れるようになっていったのだろう。開発者にもサイズの制約が気になるようになっていったようだ。サイズを小さくすることには成功したがやはりかなり高価格であった。2020年のYSP-2000の後継機と思われる。

YSP-1600(2015/9)

薄型のYSP製品。MusicCastに対応しネットワーク型にしつつ薄型化しようとする試み。同時にSRT-1500という台座型の製品が出ている。

YSP-5600(2015/10/15)

Dolby Atmosに対応した。だがやはりかなりの大きさがある。最初から全てを前面に集めてしまおうというのがコンセプトなのだが、徐々に分散型の製品が増えてゆき存在意義が失われていったようだ。横幅は110cmで高さも20cm以上ある。

この年にソニーはモノリシックデザインに対応したスリムタイプでハイレゾ対応のサウンドバー群と廉価版のサウンドバーを発売している。本格的なサウンドシステムの他にテレビの音をよくする製品が売れ始めていたことがわかる。テレビが薄型化したことによりスピーカーの品質が劣化していったことも関係しているかもしれない。

Yamahaはこれ以降自社製アプリを使って音楽サービスと自社製スピーカーを統合するMusicCastという規格を展開しようとしている。YSP-5600はMusicCastに対応しているが2016年にはさらにMusicCast対応スピーカーが増えてゆく。YSP-2700もその一つだ。

MusicCast対応製品は次のとおり。

MusicCast BAR 400(生産完了品)  YSP-5600(生産完了品)  YSP-2700(生産完了品)  YSP-1600(生産完了品)  MUSICCAST-P306(生産完了品)  SRT-1500(生産完了品) 

2018年にはMusicCastスピーカーでコンポーネント化できるスピーカー群が売り出された。

現行品

YSP-2700 (2016/7/28)

7.1ch対応だがDolby Atmos対応ではない。サイズの小型化を実現した。アプリを使って各種音楽サービスに対応したり、ファームウェアの更新で新しいフォーマットに対応するなど意欲的な改変もなされている。


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