Dolby Atmos対応のサウンドバーが標準化している。しかしコンテンツが見つからず折角の機能が楽しめないという人も多いのではないか。
Dolby Atmosが今ひとつ楽しめない事情は2つある。1つはコンテンツの少なさ。そしてもう1つがメーカーの囲い込み戦略だ。
- 最近普及が進んだDolby Atmosは正しく設定できれば満足できるがコンテンツを探すのに一苦労だ
- サブスクはAppleTVが最も安く買い切り映画もある
- MacでDolby Atmosを聞くためには正しい設定と正しいサブスクの選定が必要
結果的にはAppleシリコンのMacとAirPods ProでDolby Atmosを体験できた。AppleのTVアプリでDolby Atmos対応の映画を購入し英語で聞く必要があった。
音がDolby Atmos化していることが確認できたのでChromeCast with GoogleTVでも試してみた。こちらもきちんとDolby Atmosになった。一度確認できると迫力のある音を気軽に楽しめる。
お試しコンテンツとして試したのがブレードランナー2049。セールス価格で500円だった。ちなみに今回AppleTVと言っているのはハードウェアではなくソフトウェアとアプリのことを言っている。
目次
Dolby Atmosとか空間オーディオと言う言葉がある。最新のオーディオ機器はどれもDolby Atmos対応を謳っているがコンテンツが少ないため「本当に必要なのか?」という声もあがる。
Dolby Atmosのメリットは
- 音楽や映画に浸ることができる=没入感
- 個々の楽器やモノの動きがはっきりと分かる(粒立ち・解像度が良くなる)ためアーティストの意図がわかる=粒立ち
に分類できる。
今回はAppleTVでブレードランナー2049を購入して試してみた。映画の購入価格は(価格に変動があるのだが)550円だった。
試す方法は3つある
今回AppleTVのブレードランナー2049で試したDolby Atmosは3つある。
1. サウンドバーとストリーミングデバイスでDolby Atmosを試す
ChromeCast with GoogleTV(1,650円)+DENONサウンドバー(16,500円)+AppleTVで試すとDolby Atmos信号を受信した。ChromeCast with GoogleTVはHDMIパススルー(つまり内部で音声を処理しない)で信号を流している。FireTV Stick HD版はDolby Atmosには対応していないはず。

2. iPhone, Mac, iPad + AirPods Pro
Dolby Atmosを楽しむためには手持ちのiPhoneやiPadと対応するAirPodsを購入すればいい。その後、AppleTVで適当に映画を買って試すのが最もお勧めである。

3. Mac + Dolby Atmos対応サウンドバー
囲い込みに走っていたAppleだったがついにMacのDolby Atmos信号を解放した。OS SequoiaになってHDMIパススルーに対応したのだ。これはApple独自の音声信号処理の内部処理を諦めてサウンドバーに音声処理を「丸投げ」する方法だ。Appleシリコン製のMacにHDMIケーブルが接続できれば手持ちのDolby Atmos対応サウンドバーでドルビーアトモスが楽しめる。
なぜAppleTVが最もオススメなのか
AppleTVがオススメなのは、買い切りの映画からDolby Atmosを楽しめるからだ。さらにサブスクでもAppleTVが最も安い。
Amazon PrimeとNetflixはプレミアムサービスが必要
Amazon PrimeのDolby Atmosは4K映画に付随するサービスだ。このため4KサポートのChromeCast with Google TV/ Fire TVが必要となる。Netfixもプレミアムプランが必要。これが意外と割高だ。もちろん毎月たくさんお金を払ってもいいという人は最初からNetflixでもいいのだろうが、本当に必要なのか試してみたいという人は買い切りの映画からスタートするといい。サブスクは必要ない。
| サービス名 | 月額基本 | Atmos対応 | 特徴 |
| Apple TV | 900円 | 900円 | 最安値。テレビを中心にDolby Atmosが充実。買い切りの映画も一部Dolby Atmos対応 |
| Amazonプライムビデオ | 600円 | 990円 | ベースは600円だが、Dolby Atmos対応には広告なしプラン(390円)が必要。 |
| Disney+ | 1140円 | 1,520円 | プレミアムプランが必要。マーベル、スター・ウォーズ作品などに強い。 |
| Netflix | 890円 | 2,290円 | 890円は広告付き。Dolby Atmoを見るためにはプレミアムプランが必要。 |

最もお手軽なのはApple TV+かApple Music AppleTVは550円で購入できる映画も
AppleはFull HDのストリーミング再生機器でもDolby Atmos対応のコンテンツを楽しむことができる。
今回はまずお試しとしてブレードランナー2049を102円でレンタルした。このときの購入価格は800円程度だった。AppleTVの映画はバーゲンがあり価格が変動する。しばらく経ってからブレードランナー2049の価格を見たところ普通価格に戻っていて購入が2037円レンタルが713円になっていた。更にその後でMac mini M2を購入した。Air pods ProはAppleシリコン系のMacと組み合わせると立体音声とヘッドトラッキングが使える。AppleTV+で映画を物色したところブレードランナー2049の価格が550円になっていた。これは買いだ!と500円で購入した。
AppleTVの設定の難関
ただしAppleTVでDolby Atomos映画を楽しむにはかなり長い道のりがある。とにかく設定がややこしいのだ。
1. AppleTVのDolby Atmos対応は原語だけ
最後の難関は言語設定だった。実はDolby Atmos対応は英語だけで日本語音声は5.1chになってしまう。これはMac mini M2+AirPods ProでもChromeCast with GoogleTVでも同じだった。


2. 信号としてDolby Atmosが選べるのはAppleの純正デバイスと組み合わせたときだけ
次にこの表示が出てくるのはApple純正デバイスを接続しているときだけだ。
3. Mac+Dolby Atmos対応サウンドバーでDolby Atmosを出力するには?
サウンドバーの接続はやや複雑だ。情報があまり行き渡っていない。というよりAppleが情報を出していない。
Mac miniのHDMIをDolby Atmos対応のサウンドバーと接続した状態でオーディオアプリを立ち上げる。するとこんな画面が出てくるのでスピーカーを設定する。

次にAppleのTVアプリの設定をする。HDMIパススルーを優先にする。この画面はAppleシリコン製のMacでありSequoia以降のOSではないと表示されない。

この状態で再生するとサウンドバーの表示がDolby Atmosを受信していることがわかる。手持ちのDHT-S217では青色表示になる。ただし音声がサウンドバー以外のところから出せなくなる。また音声信号に関する情報はなくなる。つまりMacではその信号がDolby Atmosなのか確かめられなくなる。

なぜこんな事になっているのか?
つまりこうなっている。
- Apple純正機器を使うとUIレベルでドルビーアトモスが楽しめる
- Apple純正以外の機器を使うと「パススルー」が選ばれてApple社製品は音声処理をしなくなる
もともとAppleはユーザーを自社製品で囲い込もうとしていた。ハードウェアを売るためにDolby Atmos製品を安くコンテンツ提供したのだろう。しかし独占禁止法の問題や「せっかくDolby Atmos機器を持っているのにコンテンツが楽しめない」という人たちが他のサブスクに流れかねない状況となりパススルーと言う抜け道を作ったのではないか。アップルサポートは「他社製品の情報は一切感知しない」し「個人的な経験を語ってはいけない」事になっているそうだ。HDMIパスするーに関しては社内ドキュメントがないため外にも一切情報が出てこない。
統合しても良かったのだろうがオリジナルのDolby AtmosとApple独自の音声信号処理には違いがあるのではないかと思う。Appleは3Dゴーグルを発売すると言われており「このために採用された技術なのではないか」という指摘もあるそうだ。このイマーシブ体験のためにヘッドトラッキングなど独自の技術が使われており信号の統合を難しくしているのかもしれない。
AirPodの体験は独特だ
没入感が得られるAirPodsのヘッドトラッキングは一度試す価値ありだ
Mac mini M2でもiPhone SE(第2世代)でも顔を動かしても音の発信源が固定しているように感じられるためスピーカーから聞いているような錯覚を覚える。これは不思議な体験だ。
あたかも目の前にスピーカーがあるような錯覚を覚える。ブログを書きながら音を聞き続けているが右側にあるブログ画面で文章を書いていると右側の画面から音が聞こえるような気がする。これはあくまでもAir Pods Proが作り出した錯覚である。Dolby Atmosがさらに効果的なのは雑踏などの環境音である。
そもそも人はなぜ音の方向性がわかるのか
そもそも人はなぜ音の方向性がわかるのか。ものが動いていれば左右の音圧が変わる。動かない場合は人が頭を動かす。すると音圧の変化が生じ方向がわかる。
AirPods Proを使うとこのありがたみがよく分かる。頭の動きを感知して音のバランスを変えるためにわざわざ専用のチップを使っているそうだ。イヤホンは頭の中に音場を作るために特に没入感が得られる。
つまり、日常を一旦忘れて映画や音楽に浸りたい人にとっては魅力的な音声フォーマットになっている。スピーカーで音を聞いている気分になるのだ。
粒立ちが増す
もう一つの魅力が音楽の粒立ちである。楽器の場所を微妙に変えることでステレオ以上の粒立ちを実現している。特に現代の電子音楽を聞いていると実に様々な効果音が使われているが、これがよく理解できるのだ。
B’zのOcean(ステレオ)とジェファー・ロペスのIt’s me…now(Dolby Atmos)を聞いてみた。目をつぶって両方を聞くとIt’s me…nowはダンスホールで音を聞いているような雰囲気に浸れる。
この粒立ち感は映画の効果音楽にも生かされている。映画をイヤホンで聞いている場合にはiPhoneを動かすと音が変わると言う没入感も追加される。その体験は独特のものだ。
Macで利用できるDolby Atmosは純正アプリだけ
MacのAmazonはステレオ再生止まり
AmazonはChromeCast with GoogleTVでは5.1chに対応している映画でもMacのPrimevideoアプリはステレオ止まり。
Macは他社製ブラウザーにも制限をかけている?
Dolbyのでもサイトですらステレオ止まり
今回はDolbyのビジュアライザーを試した。これも非常にもやもやする体験だった。実は本家のデモサイトが空間オーディオに対応していないのだ。


KORG Live Extremeで聞くとSafariだけは空間オーディオを聞くことができる
KORGがLive Extremeというサービスをリリースしていてデモサイトを作っている。このコンテンツの一部が空間オーディオで再生できる。Airpods Proで聞くと空間オーディオの設定が出てくる。配信する方法はあるが対応するプロバイダーが少ないということなのだろう。
Safariの横の表示が明示的にドルビーアトモスになっている。ではHDMI経由でも信号が出るのでは?と思ったのだが実はサウンドバーに空間オーディオを出力できない。

そもそもDolby Atmosは無料ではないためライセンス料が発生する。このためハードウェアの囲い込みのための道具のような位置づけになっているようだ。

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