このエントリーのポイント
- きちんと設定できればそれなりに満喫できる
- しかし技術情報がないので底に行き着くまでが大変
- 結果的に実感できていない人が多いのではないか
目次
どうしても立体音響を試してみたくてサウンドバーを買った
Dolby Atmosについて調べているうちに実際に体験したくなった。とはいえあまりお金もかけたくない。ハードオフで物色したところSONYのHT-X8500(22,000円)とDENON DHT-S217(16,500円)を見つけた。DHT-S217のほうが安かったのでChromeCast with GoogleTVといっしょに使うことにした。これがなかなかモヤモヤする体験だった。
どうもAppleが非Apple製のデバイスへの機能を渋っているらしい。結局Appleのサービスと製品に囲い込まれているのが最もスムーズで満足がゆく体験と言うことになった。
だがその後しばらく経過してMacに標準搭載されているAppleのTVアプリで正しくDolby Atmosを出力する方法を見つけた。
どのサブスク・サービスを使うのが一番安いのか
ポイントは次のとおりになる。この時点ではAppleのサブスクが一番安いと思った。
- ChromeCast with GoogleTV(4Kバージョンではないもの)でAmazon Primeのルビーアトモス対応コンテンツを見てもドルビーアトモスにならない。Amazon Primeアプリには音声方式を変更できる方法がない。DENONのサポートにも問い合わせたがサポートはこの現象を把握していなかった。どうやらAmazon Primeは4K映像でなければDolby Atmosが出力できないようだ。
- 一方、Chrome Cast with GoogleTVのAppleTVアプリでDolby Atmos対応のコンテンツを再生すると青色表示になった。

ChromeCast with GoogleTVの設定を確認する
こちらがHT-CT380でChromeCast with GoogleTVの音声信号を見たときのオプションだ。ドルビーアトモス/ドルビーデジタルプラスは無効な形式として認識されている。

こちらがDHT-S217で同じメニューを見たもの。ドルビーアトモス/ドルビーデジタルプラスは有効な形式。

つまりDHT-S217はハードウェアとしてはDolby Atmosに対応している。問題はアプリなのだ。
AppleTV+の複雑な配信戦略?
テレビ番組はサブスク誘導のためにDolby Atmos対応
AppleTVはサブスクのユーザーを増やすべく第一話をサンプルとして出している。これをDHT-S217に出力するとブルー表示になる。つまりサウンドバーとストリーミングデバイスはきっちりDolby Atmos対応になっている。
映画はなぜかDolby Atmos非対応?
ところが映画はDolby Atmos対応になっていてもChromeCast with GoogleTVからはDolby Atmosが出力されない。一方で同じソースをMac mini M2で聞くと空間オーディオ対応になっている。つまりApple製品囲い込みのためのツールとして利用していることになる。
そのうち複雑さの原因がわかってきた
実はDolby Atmos対応の映画でもAtmos対応になっているのは原語だけ。日本語翻訳はDolby Atmos対応ではない。このため音声を英語と日本語で切り替えているうちに頭の中で対応がごちゃごちゃになってしまったようだ。
さらにMacOSでDolby Atmosをサウンドバーに送るためには設定が必要。ここまで気がつくのに数ヶ月かかった。
条件1:Dolby Atmos対応の映画を探す
条件2:スピーカーを正しく設定する。
サウンドバーを接続した状態でオーディオ設定アプリを開き、スピーカー設定をAtmosに変更する。

条件3:AppleTVアプリを設定する
おそらく最難関はここだろう。これに気がつくのに数ヶ月かかった。デフォルトではマルチオーディオをダウンロードしてくれないのだ。「AppleTVアプリ」の設定を変更する必要がある。HDMIパススルーを選択しないとサウンドバーに正しい信号が行かないようだ。AirPod Proには関係がない設定のようだ。このためこれを知らないと「AirPodsProでは聞けるがサウンドバーでは聞けない」という間違った認識になってしまう。
- ただしHDMIパススルーが選べるのはSequoia以降
- それ以前のOSではメタデータがサウンドバー側に送られずLPCMでデコードされる。立体音響になっている可能性は高いがサウンドバーには信号が送られずバーチャルなのか区別できない。
- これがデフォルトになっていないのはMacの内部スピーカーなどが未加工のDolby Atmos信号に対応していないためと見られる。
- パススルーを選択するとスピーカの切り替えができなくなり強制的に対応するサウンドバーが選択される。

条件4:音声は必ず原語を選ぶ
今回素材として使ったブレードランナー2049は英語のみがDolby Atmos対応になっている。

そもそもサウンドバーのバーチャル立体音響の限界もある
ではここまで苦労してでもDolby Atmosコンテンツを手に入れるのが「いいこと」なのか。どうやらDHT-S217の音は「仮想Dolby Atmos」らしい。上向きのスピーカーが付いているわけではなく「天井に音が跳ね返るならばこのように残響するだろう」と計算して作られているそうだ。
そしてもう1つのポイントは、Dolby Atmosに含まれる天井からの音、つまりハイトの情報もデコードし、再生できる事。ただし、前述の通りS217は天井反射を使うDolby Atmosイネーブルドスピーカーは搭載していない。信号としてハイト情報もデコードできるが、それを信号処理し、加味した状態でハイトの無いスピーカーから再生し、擬似的ではあるが臨場感を高めた再生を行なう「Dolby Atmos Height Virtualizer」機能を備えている。要するに「天井からのリアルサウンドは再生できないが、上からの音もバーチャルで再現した広がりのある音を再生できるようになった」というわけだ。
デノン、あの人気サウンドバーがAtmos対応で超進化「DHT-S217」
メン・イン・ブラック インターナショナル(これはもともと5.1ch対応)でエイリアンがミサイル攻撃を受ける場面ではミサイルがきちんと前から耳の横にまで飛んでくる。また空中浮揚バイクで走り回るシーンも十分な迫力がある。反響を利用しないので後ろにまで飛ぶことはない。さすがにリアルサラウンド(実際にスピーカーを背景に設置したもの)の方がそれらしい音の響きになる。

Appleに囲い込まれたほうが幸せになるという現実
なんとなく悔しい気もするがAppleに囲い込まれたほうが立体音響を簡単に満喫できることがわかった。特にAirPods Proを使うやり方はスムーズだ。
iPhone SE(第2世代)+AirPods Pro(第1世代)+AppleTV+という組み合わせで「窓際のスパイ」と「サニー」の第一話を見た。サブスク登録しなくても第一回はお試しで見ることができる。AirPods Proはかなり新体験だった。
スマホを動かすと音が出ている場所が動いて感じられる。つまりイヤホンをつけているのに「つけていないかもしれない」感覚が得られる。かなり複雑な計算をして立体感を作っているようだ。続いて映画をレンタルしてみた。
ブレードランナー2049は2017年の映画である。SF大作におなじみの飛行物体が空を飛んでゆくシーンなどで立体オーディオを体験できる。ただこの立体音響が楽しめるのはAppleシリコンのMacとAirPods Proを使っている場合のみ。
これを楽しんで初めて「ああDolby Atmosって素晴らしいなあ」と思った。
ホームシアターシステムとおうち映画館の構築方法の記事まとめ – Gadget Macで作るホームデジタルスタジオ へ返信する コメントをキャンセル